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2008年11月23日 (日)

そもそも情報とは何か?その大枠の見取り図

先のエントリー「情報システム構築ではまず行動は定義されねばならない」において、情報システム構築は行動定義に基づかねばならないこと、その行動定義は最終的には知識化に至ることを述べた。

だが、システムと行動定義(知識)の間には、もう一つ、重要な要素が介在する。情報である。情報システムなのだから、情報が重要なのは当たり前であるが、だが、そもそも情報とは何なのか、ビジネスにおいてどのような役割を果たしているのか、必ずしも自明ではない。

そこで、情報とは何かについて見て行きたいのだが、そのために、いくつか整理しておきたことがある。

■ITマネジメントと情報マネジメント

まず、ITマネジメントと情報マネジメントの区別である。ITは字義通りに訳せば「情報技術」であるが、それゆえ、ITは情報を前提としている。情報あっての情報技術である。ビジネスにおいて情報が重要であり、その活用が不可欠であるからこそ、それを効率的に流通させるための技術(つまり情報技術)が必要となる。だから、ITをマネジメントする前に、まず情報をマネジメントする必要がある。自社のビジネスにとって、どのような情報が重要でかつ不可欠なのかを定義し、活用し、たえず見直していく。それがあって初めて、そのために必要な技術インフラ(IT)のマネジメントが問題となるのである。

■情報マネジメントにおける規定的情報と触発的情報

その情報マネジメントにおいて、さらに2種類の情報を分けておく必要がある。規定的な情報と触発的な情報である。前者は、行動を規定する情報という意味であり、マニュアル化され標準化された行動を取るときに決まって必要となる情報のことで、情報システムで取り扱われるのは主にこの情報である。それに対し、後者は、思いもよらない発想や行動を生み出すような情報、すなわち、その情報に触発され、ひらめいて、新たなアイデアが生まれるといったタイプものである。これはふつう、情報システムにはそぐわない。

ビジネスにおいては両方とも不可欠である。規定的情報と触発的情報は車の両輪であって、どちらがなくてもビジネスは成り立たない。コンプライアンスや品質管理の観点からは、規定的情報がきわめて重要である。しかし、それだけでは新たな価値を生み出すことはできない。一定品質の製品を生産し続けることはできても、市場を創造するような斬新な製品は生み出せない。それでは、企業として未来はないであろう。新たな発想やアイデアを触発するような情報を社内に供給し続けることが、企業の未来を開くのである。

規定的情報と触発的情報は、情報内容によって区別されるのではない。まったく同じ内容の情報が、ある人にとっては規定的で、別な人にとっては触発的ということがありうる。決まりきった経費項目の情報が、人によっては劇的なコスト削減のアイデアを生み出すきっかけになるかもしれない。内容が必然的に規定的か触発的かを決めるのではなく、むしろ、それを受け取る人(感性、問題意識、文脈等々)の違いによって、規定的にもなり、触発的にもなるのである。

このことから見えてくるのは、触発的情報のマネジメントのしにくさである。上に見たように、触発的情報は偶発性をもつ。どの情報が誰のもとで触発的な機能を果たすかは、なかなか見通しがたい。それは偶然の僥倖のように新たな着想を生み出すように見える。また、このような情報は、ビラミッド型組織における上下伝達にはあまりそぐわない。むしろ、横方向のネットワーク的な伝達によく合う。休憩室でタバコを吸いながら喋り合ったことで新たなアイデアがひらめくということもありがちなことだ。正式な組織よりも、非公式なグループでのやり取りが自由な着想のもとになることもあるのである。となれば、さらに触発的情報の全体は見通しがたくなる。

実際、触発的情報のマネジメントには限界がある。それは、偶発的であるがゆえにマネジメントすることが難しい。しかし、まったく不可能なわけではない。企業において触発的情報は価値創造と結びつく。それゆえ、価値創造と関りのある企業領域は触発的情報と親和性が高いということになる。たとえば、顧客の声やマーケットの情報は新製品や新規事業と結びつく。あるいは、他社のベンチマーキング情報などは自社の業務改善のアイデアに繋がる。こうした情報領域に豊富な情報が入ってくる仕組みが触発的情報のマネジメントにおいては重要になろう。これについては、また、別の機会に書きたいと思う。

それに対し、規定的情報は、はじめに見た行動定義(知識)に密接にかかわる。触発的情報が偶発的要素を持っているのに対して、規定的情報は行動定義に基づいてフィックスされている必要がある。それぞれの業務行動は必ず何らかの情報に基づき、かつ何らかの情報を生み出す。業務行動定義には情報定義が必ず伴う。規定的情報はあらかじめ定義され、誰が、いつ、どのように活用し、どのような行動に結びつくかが設計され、その通り運用され、また改善されねばならない。その意味で、規定的情報こそが、情報マネジメントの主要な対象となる。

■ITマネジメントにおける情報システムとコミュニケーションプラットフォーム

情報マネジメントのこうした区別に対し、ITマネジメントも2つの領域に区別される。情報システムとコミュニケーションプラットフォームである。ふつう、ITマネジメントは情報システムを主要モデルとして展開される。システム監査も情報システムを念頭においているし、情報セキュリティも情報システムにおいて扱われる情報が主な対象である。J-SOXにおけるIT全般統制もCOBITも、IT戦略から、システム開発、運用全般、すべて情報システムが基本前提となっている。

しかし、企業のITを考えるとき、情報システム以外に重要な領域がある。それがコミュニケーションプラットフォームとしてのITである。情報システムが、インプットされる情報、アウトプットされる情報が定義されており、それが使用される業務行動も設計されているのとは対照的に、コミュニケーションプラットフォームは、字義通りプラットフォームしかない。その上をどんな情報が流れるかは完全には定義されない。大枠はあるものの、決まった情報が必ず流れるわけではない。だから、その情報からどのような発想や行動が生まれるかも事前に決めることはできない。

メールにしろ、社内掲示板にしろ、ある程度の枠はあるにしても、基本的には発信自由である。そこでは思い思いに情報がやり取りされる。インプットもアウトプットもふつう定型化されない。メールシステムもグループウエアも、それ自体が情報を生み出すのではなく、あくまで情報が流れる土台に過ぎない。

そもそも、一つの業務を進めていく上で、コミュニケーションは不可欠の要素である。どれだけマニュアル化され、行動定義がなされていても、実際に人と人とが協力して業務を進めていこうとすれば、そのつどの状況に適応するためにさまざまなコミュニケーションをとらねばならなくなる。各人の業務習得の度合いも違うであろうし、個性や性格も違う。当該業務の置かれた社内、社外の環境も違うし、顧客の要求レベルも違う。その違いに適合するためには相談し、連絡し、教え合い、議論等々する必要がある。そのとき対面だけでなく、メールやグループウエアが重要な役割を果たす。

さらには、いろいろなアイデアを出し合ったり、そこから新しい着想を得たりすることも、コミュニケーションの重要な役割である。ブログやSNS、wikiなどのWeb2.0のツールを社内で立ち上げるケースも見られる。グーグルが社内の日報にブログを使っていることは知られているが、これによって、新しいアイデアが提案され、そこに他の人が新たな着想を付け加え、大きなプロジェクトに育っていくのである。

上で見た規定的情報と触発的情報で言えば、情報システムが主に規定的情報を扱うのに対し、コミュニケーションプラットフォームは主に触発的情報の流通に資する傾向が強い。それだけに、コミュニケーションプラットフォームはITマネジメントにとって重要である。先にも触れたように、ITマネジメントはふつう情報システムばかりに目をやる傾向が強い。しかし、コミュニケーションプラットフォームを計画的に導入していくことは、それに劣らず重要なのである。

最後にまとめておこう。

◎情報マネジメント : 規定的情報と触発的情報の区別

◎ITマネジメント : 情報システムとコミュニケーションプラットフォームの区別

◎そして、規定的情報≒情報システム、触発的情報≒コミュニケーションプラットフォーム

それから、もう一つ付け加えておきたい。規定的情報と触発的情報の区別は、情報マネジメントやITマネジメント(つまり、企業という枠)から完全に離れて、インターネットの領域においても妥当する。たとえば、Web3.0で言われているパーソナライゼーションとリコメンデーションについて言えば、前者は主に規定的情報に、後者は主に触発的情報に親和的である。なぜなら、パーソナライゼーションは、自分が欲しい情報をピンポイントで求めるが、そのときその情報を必要とする行動が事前に想定されていると考えられるからであり、また、リコメンデーションは、思わぬ情報との出会いの側面が強く、そのつど新たに考えや行動を誘発すると考えられるからである。

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