日本の民主主義のためには政権交代が不可避
先日、ある主婦の方と話していて、「結局、官僚によって支配されていることが悪いんでしょう」と言われて、ちょっと驚いた。政治などには何の関心もないかと思われた彼女の口から、本質を突く発言が出たからだ。官僚主義の問題は以前からずっと言われてきたが(たとえば、ウォルフレン「日本/権力構造の謎」)、一般に理解されていたとは言い難かった。それが、いまや政治などには何の関心もなさそうな人たちにまで当然のように認識されているのである。
■族議員と官僚により身動きの取れない自民党
こうしたことが、自民党の命運をあらわしているとわたしは思う。なぜなら、官僚主義を容認し助長してきたのは自民党だからだ。「官僚主義が悪い」なら、それはつまり「自民党が悪い」ということになるのである。
自民党の一番の問題は、公約がよろしくないという点にあるのではない。どんな公約を立てようが、まともに実現できない点にあるのである。なぜなら、族議員と官僚の皆様のご承認がなければ、何一つ実行できないからだ。
朝日新聞に面白い整理がしてあった。自民党はもはや独自の政権公約を生み出す力を持っているとは思えないが、ただ、選挙に勝つために民主党に対抗していくつかの公約を付け焼刃でぶち上げた。記事では、世襲制限、定数削減、厚労省分割、農政改革の4つがあげられていた。
このうち、菅氏が主導した世襲制限は世襲議員の反発を受け、古賀氏が主張した衆院議員の定数削減は公明党の反発に会ったが、厚生労働省分割と農政改革は族議員および官僚の皆様の承認が得られなかったことによりとん挫した。
厚労省分割問題は、当初麻生首相自らが指示し、与謝野経済財政相が動いた。しかし、幼保一元化とセットになっていたため所管の文部科学省と厚生労働省双方の族議員から強い反発を受け、結局断念に追い込まれた。ある自民党幹部によれば「(幼保一元化は)国民的な人気があった小泉政権でさえできなかった。この政権でできるわけがない」との由である。
農政改革は、石破農水相が、07年参院選で民主党が農家の支持を集めた「戸別所得補償制度」に対抗して主導した。消費者の利益も考えたコメの減反見直しを焦点としていたが、自民党農林関係の族議員の激しい巻き返しに会い、結局、「骨太の方針2009」に盛り込まれなかった。
Yahooニュースには、「複数の族議員が、石破氏の言動に不満を持つ農水省幹部らとともに5月末から「石破ペーパー」の“善後策”を練り、最後は自身らの手で修正もした。その上で、石破氏には「農水省の中もほとんどが(見直しに)反対だ」とクギを刺し、農水省幹部にも「諮問会議では石破氏に紙にないことを言わせないように」と厳命した。」と生々しい経緯が紹介されている。
■政権から離れる以外ない自民党
何とも言いようがないが、族議員と官僚とのすさまじいまでの抵抗が見てとれる。
族議員が力を持ち、その背後に官僚利権構造が深く絡んでいる。この構図がある限り、自民党内でどれほど素晴らしい「改革」を打ち出されようと、それが実現されるなどということは決してあるまい。自民党は、族議員と官僚の既得権益でまったく身動きがとれないからである。
自民党がどんな公約を出すのか、どんなマニフェストにコミットするのか、そんなことは実際のところまったくもってどうでもいいことだ。どんなマニフェストを出そうが、族議員と官僚の利益にかなわなければ何一つ実現できはしないのだから。国民の利益ではない。族議員と官僚の利益である。もし、それにかなわなければ潰されるか、骨抜きにされるか、どちらかである。
とすれば、国民の利益となる政治(あたりまえだ!)にしようとすれば、自民党とその族議員および官僚との利権構造を解体する以外なく、それゆえ、自民党が政権から離れる以外ない、ということになる。
次の選挙ではその可能性がある。だからこそ、次の選挙が日本の分水嶺となり得るのだ。


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